国内年金・機関投資家と労働組合について、これから書いていきたいと思う。
OECDは2010年12月に発表したワーキングペーパー「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス及び資産運用方針改善案」の中で日本の基礎年金を運用する公的年金であるGPIFは運用方針にESGを取り入れ、責任投資に署名すべきと提言している。
GPIFに対しては、日本労働組合総連合会も運用にESGを取り入れるよう働きかけを行っている。連合は2010年12月に「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」を制定した。
労働者が拠出した資金または労働者のために拠出された資金である「ワーカーズキャピタル」はESG運用を行うべきであるとする原則である。
ワーカーズキヤピタルという概念で連合が念頭に置いているのは年金であることから、GPIFのみならず、共済組合や企業年金に対しても産業別労働組合や企業別労働組合を通じて働きかけを行っていくとしている。
ワーカーズキャピタル責任投資ガイドラインでは、ワーカーズキャピタルについて実際にどのようなESG方針を採用すべきか、運用委託先の選定や個別投資先銘柄に対する働きかけにも組合が関与すると定めている。
連合がこのような運動を始めた背景には米国をはじめとする諸外国における労働団体の動きがある。米国の連合にあたるAFL-CIOの準備基金は責任投資原則に署名しており、企業に対して株主提案を提出する等、積極的な活動を行っている。
米国と異なり、連合は自前の準備金・基金等を持っていないことから、傘下の産業別、企業別組合を通じた各年金およびGPIFへの働きかけを行うとしているのである。
したがって、今後、公務員共済や企業年金等に対して労働組合からESGへの対応を要求してくることになると予想される。GPIFがESG運用に取り組むかという点については、まだはっきりしない。
OECDレポートは2010年11月に開催された厚生労働省の「年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会」で報告と検討がなされているが、議論の中心はESG運用部分ではない。
運用会社側も主要信託銀行・投資顧問会社は既に責任投資原則に署名または年金に対するESG運用の提供を表明しており、体制も整備されつつあるといえよう。海外からのESG資金流入もあり、今後、日本株式にかかるESG運用は着実に増加していくものと考える。
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