進化論による企業分析では、時間の流れのなかで支配的な個体の誕生とその衰退のプロセスが考察されている。このアプローチでは出生数や死亡率の変化によって個体数の変化を測定する個体群生態学の発想を用いている。
進化経済学の代表的な研究であるラングロア=ロバートソンの業績では、製品設計の進化プロセスを検証している。
製造業の盛衰の歴史をふりかえると、産業革命によって機械を用いた生産が開始されたものの、19世紀半ばまでは自らの出資によって経営が行われる個人企業が中心だった。
20世紀の初頭に生産物市場の内部化が推進され、垂直統合を推進する経営戦略がとられるようになると、これを模倣し職能別組織を採用する企業が急増し、次第に大きな個体群となったと分析される。
そして、第二次大戦後、多角化戦略の採用によって事業部制組織の個体数が増加し、職能別組織よりも大きな個体群となるというように、個体数の変化から進化論的な説明を行っている。
この結果、進化経済学では確立した経済制度としての積極的な意義が示されている。
たとえば、日本の長期相対取引について、個体数の増減というフレームワークを用いることで、垂直統合を推進し、企業規模の巨大化を目指した、かつてのアメリカ製造業に比較して、次第に環境適合的な制度となった点が示されている。
これに対するアメリカ大企業の対応としては、縦割り型の組織構造を、環境要件への不適合と捉え、その解決策として、近年では垂直分解の動向をみせており、ダウンサイジングを推進し、組織のスリム化を図る企業の個体数の増加傾向が指摘されている。
以上の通り、進化論アプローチでは、長期的な存続がなされるか否かは環境変化に対する適応、すなわち当該企業の学習能力によって決定されるものと考えられている。
したがって、この手法は長期的な競争プロセスを組み込むことができたというメリットをもっているが、当該地域や業界などで普及した支配的な制度設計の推移を示しているにすぎない点には注意する必要がある。
たとえば、1990年代に日本企業で流行した雇用リストラの増加や、持株会社制度の導入といった流行的な現象を分析するには、業界や地域の慣習を考慮している点で有効ではある。
しかし、企業文化の存在などを十分に考慮していないために、個別企業の独自性のある対応策については検討されない点が問題として残されている。個別企業を検討対象とする経営学の観点にとっては、まだ不十分なフレームワークしかもっていないといえる。
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